散文

學天則

ねこみぞ

道のわきにある みぞから ねこが出てくるのを 見たことがある? みぞにはフタがはまっていたり、 雨の日には 水が流れていたりするけれど、 ねこたちは体が小さくて やわらかいから 自ゆう自ざいに出たり入ったり、 雨の日にはすいーっと泳いだりして、 町の…

ヒトデ、爆散

救われると思って手を伸ばしたら引っ掴まれて離してくれなくなっただけのことを運命とか言って軟禁状態を続けているところにまっとうな生活が付き従ってきたらそれはもう人生だろうななんてことを考えながら何物にも手を伸ばせずに引っ掴まれることもなく毎…

武器、裸、棒

もうダメかもしれない。死のう死のうと言葉ばかりで思っている。死ぬより先にやることはたくさんあるはずなのに、手っ取り早く現状を打破する裏技みたいに死を持ち出して、気狂いのナイフみたいに振り回している。そんなもの使う勇気すらないだろうに。そう…

ケールニッヒの白昼夢

遠き日の近代、硬式飛行船と蒸気機関車が空と大地を蹂躙していた頃、研究の行き詰まりから不眠症に悩まされていたドイツのとある植物学者が奇妙な白昼夢からインスピレーションを得て、宇宙の構造に関する現代でも未だ否定も証明もされていない画期的な予想…

生を

何にでもなれるなら、自分は何者なのか。 何者にでもなれる可能性はあったし、これからも何者にでもなれる。 しかし、初期の設定からして不可能なこともあるだろうし、環境によって難易度は変わるものだ。乱数や偶発性に賭けなければならないこともあるだろ…

ビタミンドリンク

少女は波打ち際に転がる微炭酸のビタミンドリンクの瓶を拾い上げると、海水を汲み入れてから僕に差し出した。飲めということだろうか。受け取って何気なく中身を透かしてみたが、瓶が茶色いため海水の透明度はよくわからない。 水平線に沈みゆく太陽が僕に何…